もしものときの生活再建入門|第9回・コロナでも災害でも適用される緊急小口資金

知っていますか? 被災時の支援制度。その仕組みを知ることも、大切な災害対策です。

コロナ禍で「緊急小口資金」制度が注目されています。生活困窮世帯を対象に、緊急かつ一時的な生活維持費を無利子で貸し付ける社会福祉の制度ですが、災害時にも広く適用され、コロナ禍でも特例措置で申請可能になりました。その成り立ちや仕組みを見てみましょう。

全国社会福祉協議会(全社協)の資料によれば、戦後の生活困窮者を民生委員が支援した運動の流れから、1955年に社協事業として「世帯更生資金貸付制度」が創設され、1990年に「生活福祉資金貸付制度」と改称。直後にバブル崩壊が始まり、同制度の下に、離職者支援資金、不動産担保型生活資金などが相次いで設けられました。この流れの下で設けられたのが緊急小口資金です。

「緊急」とみなされるのは、実質的に災害時か大きな不況時。1995年の阪神・淡路大震災では所得制限なく被災者全体を対象に広げ、貸付金額の上限も従来の10万円から最大20万円に引き上げられ、総額約77億円が貸し付けられました。以来、大規模な自然災害では同様の特例が設けられ、2011年の東日本大震災では貸付総額が100億円を超えました。また、リーマン・ショックの影響が大きかった2009年度も13億円程が貸し付けられました。

一方、今年はコロナ対応の特例が設けられ、申請額はすでに1000億円を突破。過去の経済危機や震災と比べてもケタ違いの影響の大きさです。今回は1人10万円の特別定額給付金が決まる前の3月下旬から受け付けが始まったこともあり、主な窓口である各市区町村の社会福祉協議会には申請が殺到したようです。ただ、小口資金は生活困窮者の「自立」を促す制度とも連動し、無利子ですが1年の据置期間後、原則2年以内には償還(返済)しなくてはなりません(今回は償還時になお所得の減少が続いていれば免除の場合も)。災害時も不況時も、わらにもすがりたい気持ちは皆一緒。だからこそ、普段からさまざまな制度を知り、適切に選択したいものです。

 

文=関口威人 イラスト=飯川雄大 (2020年8月発行『震災リゲインプレス』第34号より)


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