第7回・企業の社会的責任と防災

知っていますか? 被災時の支援制度。その仕組みを知ることも、大切な災害対策です。

前回に続き、災害と「仕事」について、今回は企業の社会的責任としての防災を考えてみます。企業防災といえば、まずは建物や工場の耐震化、食料・燃料の備蓄、従業員の避難訓練などが思い浮かびます。最近は、災害などの緊急事態後にどんな手順で企業活動を再開するかを計画しておくBCP(事業継続計画)の作成が呼び掛けられています。

ひとたび大災害が起これば、事業所や従業員だけでなく、取引先や顧客、各々の家族も被災します。東日本大震災では、宮城県の自動車学校で教習生や職員が津波の犠牲になり、遺族による損害賠償請求裁判では、運営会社側に安全配慮義務違反があったと認定されました(後に高裁で和解が成立)。この判例を考察した岡本正弁護士は、会社は災害前の津波発生までは予見できなかったとしても、災害後に巡回してきた広報車両が呼び掛けていた情報などをきちんと受け止め、適切に避難の判断をしなければならなかったと指摘。適切な判断を助ける事前マニュアルの整備や人材育成こそBCPの基本だと提言します(『災害復興法学Ⅱ』、慶應義塾大学出版会、2018年)。こうして「人」に焦点を当てると、従業員や家族に被災後の生活再建制度などを周知することも企業・組織のすべきことだというのです。

ただ、現実にこうした準備のできている企業は多くありません。BCP策定は法的な義務ではなく、南海トラフ地震が懸念される中部地方でさえ、策定しているのは大企業で約6割、中小企業では2割未満です(中部経済連合会他による「企業の地震対策に関するアンケート」、2018年)。

国は中小企業のBCP策定を支援するため、関連法の一部を改正、通称「中小企業強靱化法」が今年7月に施行されました。中小企業の行う事前対策やサプライチェーンの協力態勢などの基本方針を国が策定し、それに沿ってBCP策定などをした企業を認定、支援措置を講じます。具体的な動きは今後、中小企業庁や都道府県、商工会議所などの連携から出てくるでしょうから、注目しておきたいものです。

文=関口威人 イラスト=飯川雄大
2019年8月発行『震災リゲインプレス』第30号より)


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