人と復興|岡本 正さん—「災害復興法学」を提唱する弁護士

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現在、慶應義塾大学、中央大学大学院等で教鞭もとる岡本さん

法律が「災害後」を生き抜く支えになる

災害に備える手だては、耐震建築や避難計画など多領域にわたる。その中で、法律面から意欲的に活動するのが弁護士の岡本正さん(36歳)だ。大災害では生存者も被災後を生き抜く困難さに直面するが、そのとき法と生活の関係は、想像以上に密接になる。

「東日本大震災では、事業拠点や自宅を失い、震災前からのローンがあるため新規の再建資金も借りられない“二重ローン問題”などが顕在化しました。ただ、被災者生活再建支援法など人々を救う法制度もあり、これらの情報周知は“知識の備え”といえます」

これを実感したのは、3.11後に弁護士会が連携して始めた、被災地での無料法律相談が契機だという。

「そこでは多数の被災者の悩みが“相談票”として記録されていたんです。そこで、これを集約・分析すれば今後の災害対策にも活かせると考え、日本弁護士連合会に進言してその仕事を担当しました」

4万件もの声から浮かび上がったのは、同じ災害でも地域や時期で相談の様相に特徴があること。住宅でいえば、全壊か半壊か、持主か借主かで悩みも異なり、原発事故の影響など前例なき領域もある。震災から月日を経ると、被災者間の紛争も見られた。

「内陸か沿岸かといった地域特性に加え、時系列でも相談内容は変わります。各々に応じた制度や課題の共有は、国や自治体の災害対策の指針にもなる」

このデータベースは、災害の教訓を現行法に反映する動きにも貢献した。一例は、2011年7月の災害弔慰金法改正。被災遺族に支給される弔慰金を、従来対象外だった兄弟姉妹も一定条件下で受け取れるようになった。兄弟姉妹で同居または生計を同じくしていた遺族も一定数いたことがデータでわかり、対応を望む弁護士らの要請書が改正につながった。

「被災者の生の声を“リーガル・ニーズ”として集めることが、法改正の必要性を示す“立法事実”となる。これに関わるのも法律家の仕事と考えます」

かつて勤めた内閣府で行政改革の現場にふれたことも、岡本さんのこうした信念を支える。著書『災害復興法学』(3面 書評欄参照)では一連の活動を豊富な資料と共にまとめ、論文執筆や大学での講義も行う。今後は企業での防災研修なども、危機管理の視点を交えて積極的に取り組みたいと語る。

「阪神淡路大震災でも法律家が調査や提言に努め、今回それが活きた場面も多い。この動きは世代を越えつないでいくべきで、だからこそ、多くの人に災害と法を“自分ごと”として考えてほしいのです」

『災害復興法学』最初の頁にはこう書かれている。「この国の未来を担うあなたへ」。

(内田伸一)


岡本正総合法律事務所

http://www.law-okamoto.jp

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