ホタテ漁の復活が「生きた教材」。石巻・雄勝小の復興教育

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震災体験乗り越え、地域とともに歩みだした子どもたち

「ホタテ漁? 興味なーい」

雄勝の子どもたちから、そんな言葉が出るとは信じられないだろう。でも、当然といえば当然だ。漁師の街だからといって、みんながみんな魚介や海を知り尽くし、思い入れがあるわけではない。

こうした現実を、震災2年目の春、雄勝小学校5年生の担任となった徳水博志先生は真正面から受け止めた。「雄勝はこれからどうなると思う?」「うーん…ハメツ?」

そんな感じの児童と、総合学習(教科の枠を超え、体験や課題解決に重きを置いた総合的な学習)の時間を利用して始めた復興教育。震災前に19人いた児童は、震災後に転校などで9人に減っていた。雄勝小自体も校舎が全壊し、教室は隣町の中学校に間借り。そこで学ぶ児童は、それぞれ心に「穴」が開いていたようだったり、「荒れ」ているようだったり。まさにマイナスからのスタートだった。

雄勝の漁師も、多くが震災で家や漁船を失った。それでも、数少ない漁師が仕事を再開していた。その一人が「合同会社OHガッツ」を立ち上げた伊藤浩光さん。徳水先生は伊藤さんを教室に招き、ホタテ漁について話してもらった。多くの人命を奪った津波だが、海底の不純物も洗い流したから、ホタテは栄養を得てむしろ大きく育つようになったという。

それを聞いた児童から感想を求められた伊藤さんは、こう答える。「津波が来たことはあきらめて、謙虚に受け止めて、前を向くしかない。きっと、いい方に向かっていくと」 児童はその言葉に、復興の意味を感じ取ったようだった。「海を憎むことなく、海と生きる漁師。体験に裏打ちされた知識。子どもたちなりに、生き方の本質をつかんだのではないでしょうか」と徳水先生。

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児童は、実際の漁船に乗り込んで漁も体験、天然と養殖の違いを考察するなど、漁業や地域への理解を深めていった。同時に、自身の震災体験を俳句や作文にしたり、ジオラマにしたり。そして最後に9人で共同制作したのが、幅180センチ、高さ90センチの大きな木版画だ。がれきに埋もれた町から、ホタテ漁や獅子舞が復活し、太陽の下で家族が微笑む新しい町に向かって「希望の船」で進んでいく自分たちの姿を表現した。

一連の授業を記録した映像は徳水先生の監修の下、60分のビデオ映画『ぼくたちわたしたちが考える復興ー夢を乗せてー宮城県石巻市立雄勝小学校 震災2年目の実践』としてまとめられた。今年4月、石巻市でその上映会とともに開かれたシンポジウムで、徳水先生はこう呼び掛けた。

「震災体験を乗り越えて、地域を学ぶことで子どもたちは生き生きとする。その子らの笑顔が大人も元気にする。子どもの力は、地域の人たちにとって生きる力、本物の宝なんです」

(関口威人)


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ビデオ映画(DVD)は教育に関係あるいは関心のある団体、機関、個人 に有料で貸し出されています。

問い合わせ:一般財団法人日本児童教育 振興財団
Tel: 03-5280-1501
http://www.faje.or.jp/video/

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