「いわての復興教育」副読本『いきる かかわる そなえる』

岩手県の小中学校で活用されている復興教育の副読本『いきる かかわる そなえる』。発達段階に合わせ3冊に分かれている。
岩手県の小中学校で活用されている復興教育の副読本『いきる かかわる そなえる』。発達段階に合わせ3冊に分かれている。

震災後の指針、小中学生の教材に

岩手県教育委員会は、東日本大震災を教訓にした復興教育の副読本『いきる かかわる そなえる』を2014年度に作成、県内の全小中学校で活用している。震災直後の2011年5月以降、県教委は各学校の先行例や有識者らの意見を参考にしながら「復興教育とは何か」を議論し始めた。2012年2月に策定された「いわての復興教育プログラム」では、復興を担う「ひとづくり」を進めるために大まかな枠組みを提示。県内の小中学校など46校を「復興教育推進校」に指定し、プログラムを基にした独自の取り組みの支援に乗り出した。

その成果を踏まえた次年度の改訂版で「郷土を愛し、その復興・発展を支える人材を育成するために、各学校の教育活動を通して3つの教育的価値を育てること」と「いわての復興教育」を定義。それが「いきる」「かかわる」「そなえる」のキーワードで、それぞれには「かけがえのない生命」や「やり抜く強さ」、「ボランティア」、「学校・家庭・地域での日頃の備え」など「具体の21項目」が整理、分類された。副読本はそれらを「小学校・低学年用」「小学校・高学年用」「中学校用」と発達段階に合わせてテキスト化、ビジュアル化した教材となっている。

ページを開くと、実際に岩手であった出来事や家族、地域にまつわる話題が並ぶ。たとえば「走れ、かまいしキッチンカー」「遠野に『まごころ』が集まった」「岩手の主なさいがい」「そのとき、どうする?」など。「生きのこったイトヨ」というページでは、国の天然記念物だったイトヨが大槌町の復興のシンボルになったことを紹介。身近なエピソードとともに「あなたの町ではどんなものがある?」「あなたならどうする?」と子どもたちに問いかける。

沿岸部と内陸部に100kmほど距離のある岩手県では、被害の程度や復興に対する温度差がずっと課題とされてきた。「特に内陸部での震災の風化を防ぐ狙いからも、こうした分かりやすい副読本が必要とされていました。現在のところ、各学校からの反応はとても良好。総合的な学習の時間でも道徳でも理科でも、各校のやり方に合わせて使ってよく、我々も研修会などを開いてさらに活用を進めています」と、県教委事務局学校教育室学力・復興教育担当の森本晋也さん。目下の悩みは初年度に全525校の全児童生徒分、約10万部を発行したが、あくまで各学校への配架用で、子どもたち個人の所持用に提供する予算が確保されていないことだ。

実は、筆者は縁あってこの副読本の執筆に一部かかわった。1人でも多くの子どもたちに、1ページでも多く読んでもらえれば書き手としても幸いだ。「復興教育は、これからが大事なとき」という森本さんの言葉は、そのとおりだと思うから。

(関口威人)


副読本に関する問い合わせ

岩手県教育委員会
Tel: 019-629-6147
※「いわての復興教育プログラム」などのPDF版は岩手県公式サイトでダウンロード可能

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