宮城県女川町の新しいまちづくり

ついに復活。新しい女川駅が開業して、JR石巻線が全線開通する。中心市街地のほとんどが津波によって失われ、 町民の集まる場所が、仮説商店街や病院周辺等、限られた状態の女川町だが、駅の周辺では、かさ上げの工事が 急ピッチで進んでおり、海への視界が開けた新しい中心市街地づくりが姿を現そうとしている。
(取材・文=磯達雄)

1.女川駅周辺シンボル空間

女川駅はJR石巻線の終着駅。東日本大震災の津波によって線路と駅が流失したが、いよいよこの3月21日に鉄道が再開する。新しくなった駅舎は、プリツカー賞を受賞した世界的建築家の坂茂氏の設計によるもの。ウミネコが羽ばたく姿をかたどった、白い屋根が目に鮮やかだ。

駅舎/ゆぽっぽ外観

駅の周辺では、今後も整備が進む。駅からは海に向かってまっすぐにプロムナード(歩行者専用道)が延び、これに沿ってフューチャーセンター(NPO主体の活性化支援施設、3月28日オープン)、あがいんステーション(水産業体験館、今春オープン)、地域交流センター(今秋~年内オープン)、テナント型商店街(今秋~年内オープン)、物産センター(来秋オープン)などを配置。近くには女川町庁舎も建設される予定だ。

駅舎の開業は、これら中心市街地整備の先陣を切るもの。そのため、鉄道の再開に合わせて、3月21日にはまちびらきのイベントも催される。 駅舎の3階には展望デッキがあり、そこからは美しい女川湾の海が見えるはず。実は当初の復興案には巨大な防潮堤もあった。しかし計画を検討するなかで、海に近い中心市街地全体をかさ上げすることで対応し、海への視界を遮る巨大な防潮堤はなくなった。

計画をまとめていくにあたっては、町民の意見を幅広く反映させることを目的とした、まちづくりワーキンググループも組織された。平成25年度の活動では、テーマごとに分かれてワークショップを実施。女川町復興推進課の山下順氏によると、プロムナードを含む観光交流エリアの整備については、「2人がけのベンチを置こう、ロマンチックな夜景の演出を行おう、などといったユニークなアイデアが集まった」。それをもとにして、「くどける水辺のあるまち」と、少し大胆なキャッチフレーズで提言をまとめている。

町民が将来の町の姿を自ら考え、「海に向かって開かれたまち」という独自のかたちを選び取る。それを象徴するのが、この女川駅周辺の都市デザインだと言えるだろう。


女川温泉ゆぽっぽ

ゆぽっぽ内観s

震災の前、女川駅の隣りには、町営温浴施設「女川温泉ゆぽっぽ」があった。これを新しい駅舎と合わせて再建。まちびらきの翌日にオープンする。施設づくりには、ヴェネチア・ビエンナーレ絵画部門で名誉賞を受賞した日本画家の千住博氏と、JR九州の寝台列車「ななつ星」などを手がけたデザイナーの水戸岡鋭治氏がアートディレクターとして参画。2階の内壁に、千住氏が描いた樹木と一般公募で集まった900点あまりの花の絵を一体化させた巨大なタイルアートを完成させている。3階には展望デッキが設けられている。

 

住所:〒986-2261 宮城県牡鹿郡女川町女川浜字大原1-10
営業時間:9:00~21:00(最終入館は20:30まで)
休館日:毎月第3水曜
入浴料:大人(中学生以上)500円 小人(小学生)300円 幼児(小学生未満)無料
Tel:0225-50-2683
http://onagawa-yupoppo.com/


2.にぎわいを呼びこむ商業施設

駅から延びる15m幅のプロムナードを挟んで、その両側に配されるテナント型の商業施設には、物販、サービス、飲食など様々な業種の店舗が入る。日用品エリア、工房エリア、飲食エリアの3つから成り、町民の日常生活の需要を満たすだけでなく、観光客が町を訪れたくなるような需要にも対応する。隣接する物産センターや地域交流センターとも連携した機能が期待されている。

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建物を含めたエリアの設計は、星のや軽井沢などのリゾート施設を手がけた建築家、東利恵氏が担当。プロムナードと商業施設が一体化するようなデザインで、店先も人々が心地よく滞在できるよう工夫している。建物に囲まれたポケットパークのようなスペースでは、様々なイベントも想定。歩いているだけでも楽しい場所が、ここでは目指されている。

「女川の強みは鉄道の終着駅があること。レンタカー事業の誘致など機能も充実させ、観光客には女川を拠点に近隣の町を回ってもらうようにもしたい」と語るのは、この施設の整備主体となるまちづくり会社、女川みらい創造(株)の専務取締役を務める近江弘一氏。氏は女川町をホームタウンとするサッカークラブ、コバルトーレ女川のゼネラルマネージャーでもある。町の若い世代から、その手腕を買われてこの任に着いた。外から人を呼び込み、地域に根付かせる活動をしてきた経験が、商業施設の運営にも結びつくと期待されている。


“自分たちのためではなく、町のために” 設計者・東利恵さん(東環境・建築研究所)

azuma_002初めて女川を訪れたのは、2014年の夏。木の一本もない造成地でした。それから女川みらい創造のメンバーや町役場と話し合いを重ねています。みなさんからは「自分たちのためではなく、町のために」という気持ちが伝わり、公共施設の仕事でこんなに風通しのよい現場は珍しいと感じます。先日テナントに出店する方も決まり、東京ではみなさんの顔や女川の風景を思い浮かべながら設計を進めています。海から見える景色にも配慮するなど、全体の魅力をどう高めていくか考えることはたくさんありますが、震災直後に考えた「いざなにかお役に立てることがあるときは力を尽くそう」という気持ちで臨んでいます。(取材・構成=押野美穂)

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