企業の取り組み|プラス株式会社ジョインテックスカンパニー

震災後に生まれたJOINTEX東北センター。
震災後に生まれたJOINTEX東北センター。

合い言葉は「業界最速の物流回復」

プラス株式会社ジョインテックスカンパニーは、総合事務用品メーカーのプラスの社内カンパニーとして、2001年に設立。学校や病院、中小企業を主な顧客にし、全国の販売店の営業マンによるきめ細かいサービスとカタログ販売を融合させながら、文具に限らずオフィスや学校、病院などで必要な日用品からサービスまでを幅広く提供する流通カンパニーだ。

東日本大震災の発生当時、地震と大津波に起因する道路網の寸断、福島第一原発の事故による電力不足を名目にした計画停電、ガソリンの一時的な不足などにより、日本中の物流は混乱していた。

そんな中、ジョインテックスカンパニーは、震災から2日後の13日(日曜日)に災害対策本部を設置、15日には「業界最速の物流回復」を目指す、という基本方針を打ち出した。テレビからは津波の映像が流れ続け、被害の全容すらもわからない時点での決断。震災や津波による行方不明者数すらつかめておらず、命からがら避難所に駆け込む被災者には、食料や暖を取る毛布・衣服が不足している。さらには計画停電やガソリン不足という不確定要素も予想される中で、「商売」を再開することへの迷いもあった。陣頭指揮に当たった伊藤羊一さん(執行役員・ヴァイスプレジデント)の脳裏にあったのは、阪神淡路大震災でのダイエーの取り組みだった。

伊藤羊一 執行役員・ヴァイスプレジデント
伊藤羊一 執行役員・ヴァイスプレジデント

当時ダイエーグループのCEOであった中内功氏は、震災を知らせる17日午前5時台のNHKニュース速報を聞くや、即座に社内で震災対策本部を設置、午前7時半には被災地でも店舗を開くことを厳命した。自治体やボランティアが無料で水や食料を配布している中での通常営業の開始には、批判の声も上がっていた。だが、「店の明かりをつければ、それだけで被災者たちは力が出る。被災者のために明かりを消すな。客が来る限り店を開け続けろ。流通業はライフラインや」の号令のもと、通常営業を断行した。

そんな彼の言葉が、今度は伊藤さんを後押ししてくれた。「普段なら当たり前にできていたことが、震災によりできなくなった。一刻も早く必要なものが手に入れられる状態にすることこそが、流通に携わる企業にできる最大の社会貢献だ」と社員に伝え続けた。被災地周辺でも通常通りのサービスを提供し、平常通りの活動を可能にすることが、被災地の支援と復興に繋がるはずだとの信念だった。

震災後25日で被災地の98%へ配送を実現

寸断された流通網を回復させるのは、いわば血管が数カ所にわたって切断された患者の血管をつなぎ合わせ、どうしても繋げられない部分はバイパスを作り、最終的に毛細血管の一本一本にまで血液を行き渡らせる大手術。不通箇所の状況を把握しながら、代替の輸送ルートと運送業者を確保する。当然のことながらスタッフには過剰な負荷がかかる。泊まり込みでの作業や長時間の残業も必要になる。本部のある東京は震災による被害は少なかったが、その後に続く福島第一原発事故による放射性物質の飛散の可能性、さらには計画停電の影響で不安を抱く家族を残す中、社員たちは皆必死になりながら物流の回復に向け作業を続けた。

社員の奮闘と関連会社の努力もあって、3月15日には北海道と関東以南への商品配送を平時の状態にまで復旧、4月一週には被災地の98%のエリアで、配送を回復させた。

被災地のある施設からは、「発注した商品が届きました。大変ありがとうございました」というメッセージが届いた。これまでなら期日通りに届いて当たり前のものが、かけがえのないギフトとなった瞬間だ。こうした情報は、社員が自由に書き込める掲示板でも分かち合う。流通が社会に果たす役割を、すべての社員が共有することとなった。そこで「被災地優先」の方向性を打ち出すことで、社員の自主的な判断を後押しした。

ビジネスばかりではなかった。 福島県の幼稚園から「避難所の園児たちにおりがみ を送ってもらえないでしょうか」という打診があっ た。福島県はその時、まだ物流が回復していなかっ たので、普段は利用していない郵便を使い、おりが みを届けた。これがその後、被災地の幼稚園、保育園、 小中学校に向けておりがみを送る「プロジェクトお りがみ」のきっかけになっている。寄贈先は2011~ 12年で合計4365件に上る。すべてのおりがみには、 社員の手書きメッセージも添えられていた。

「プロジェクトおりがみ」のきっかけとなった福島県相馬市の幼稚園では、2011年6月末に社員の直接訪問も実現。

現地の声に応え、東北の新流通センター設立

2011年6月末には、福島県の原発周辺の避難エリアを除く未回復エリアもカバーし、ジョインテックスは東北復興支援の第二段階をスタートさせた。それが東北支社内に設置した、被災地復興のための「みちのく復興支援室」であり、2013年6月にオープンすることになる「JOINTEX東北センター」設立への着手だ。これは、2011年秋に東北の販売店経営者を前橋の物流センターに招き、これからの復興に何が必要かを話し合った際に、経営者らの希望によりジョインテックスが開設を約束したものだ。仙台空港に近い宮城県岩沼市での同流通センター誕生により、120名の雇用を確保し、東北エリアでの売り上げ増加にも貢献しているという。

「被災地を含めて、東北地方でのジョインテックスのがんばりは、被災地の顧客に好意をもって迎えられ、その効果で売り上げを伸ばすこともできました。また社員にも、自信と使命感に裏打ちされた仕事に対するプライド、前向きな意欲を感じます。しかし、次の災害に備えるという意味ではまだまだやらなければならないことが多いと思っています。流通ならではの被災地支援のあり方もまだまだあると思いますし、本社そのものの震災対策も万全にしていきたい」(伊藤さん)。

かつて伊藤さんを後押ししてくれた先人の挑戦同様、彼らの取り組みも業種を超え、企業が本業でできる被災地支援、社会貢献の可能性について示唆をくれるはずだ。


プラス株式会社ジョインテックスカンパニー

http://www.jointex.co.jp/

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