ひと部屋単位から施せる倒壊防止策―既存家屋も新築も

しなやか構造で阪神淡路大震災級の揺れに耐える「吸震工法 壁柱」

いつ、どの地域が巨大地震に襲われてもおかしくない、現在の日本。学校や病院などの公共施設や橋脚、高架などの社会インフラに関しては耐震補強が進んでいる中で、立ち後れているのが個人住宅の耐震補強だ。費用もさることながら、内装を剥がすなどの理由で、工事期間中一時的に住めなくなるといった事情も、人々が二の足を踏む一因となっている。

京都大学と(社)大阪府木材連合会が共同研究した「吸震工法 壁柱」(かべばしら)は、長さ約270センチ、幅9センチの角材9本を並べ、ボルトで連結したパネル状の耐震壁。部屋の四隅に合計8枚を設置することで、阪神淡路大震災を上回る規模の揺れにも耐えられるようになるという。耐震補強の多くが、ひたすら強度を増すものだったのに対し、角材どうしの間隔を少しだけ開け、揺れを吸収して建物を守るしなやか構造が特色。京都大学防災研究所での「実物大振動実験」でも、優れた性能を確認済みだ。

連結させた角材の摩擦力で、水平方向に揺れる力をしなやかに吸収する仕組み。横に40 センチ変形しても元に戻る。ひと部屋から施工可能。
連結させた角材の摩擦力で、水平方向に揺れる力をしなやかに吸収する仕組み。 横に40 センチ変形しても元に戻る。ひと部屋から施工可能。

研究・開発に携わる同研究所の川瀬博教授は「現行の耐震基準は、いわばガチガチに硬くすることに主眼を置いているので壁材の量が増える。これに対し、『壁柱』は硬さに加えて粘り強さを追究した工法。阪神淡路大震災のような内陸地震でも倒壊しにくいという特長がある」と解説している。新築住宅にも補強材として利用できるよう日本建築総合試験所(大阪府)でさらに評価データを積み重ね、国交省に申請。2012年末には認定がおり、新築の補強にも施工可能となった。

施工は、1部屋であれば1日で済むので、住みながらの補強工事が可能なのも売り。そのため、1部屋だけのシェルター化の工事から始め、予算と相談しながら順次家全体を補強すれば、安心感もより高まる。費用は1部屋の施工で70~80万円となっている。

この「壁柱」に使われる角材は、国産杉の間伐材。杉や檜などの針葉樹をまっすぐ育てるために密植し、成長の過程で間引くのが間伐だが、製材価格の下落とともに間伐のコストがまかなえなくなり、人工林の多くは間伐がなされないまま荒れていくか、間伐が行われても山林にうち捨てられているのが現状。間伐材の有効利用のサイクルが回り始めれば、健全な山林を取り戻すことができ、山の持つ保水力向上も期待できる。

一般家屋の耐震補強と森林保全を同時に可能にする「壁柱」の普及に期待したい。


社団法人 大阪府木材連合会

大阪市西区新町3-6-9 木材会館5F
Tel:06-6538-7524
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